突然の訃報で水木御大が逝ってしまわれました。
多くの人が言っていますがが、逝去されてもそんな気がしないのが御大の偉大なところだと思います。
御大の代表作と言えば「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズですが、今回は個人的に最高傑作だと思っている「悪魔くん」(1963〜64/全3巻)を紹介します。
厨二用語のオンパレード
子供心にワクワクする単語をたくさん教えてもらいました。
などなど非常に好奇心くすぐられる単語が沢山出てきます。(こうやってみるとユダヤ教関連が多い…)
各単語の詳細は劇中では出てきませんが、自分で調べることで広い教養を得られることができます。
知力が突き抜けた主人公
主人公「悪魔くん」こと一郎は知力が突き抜けています。先に挙げた↑書物はもう読み込んで理解しちゃってるくらい突き抜けてる。
敵対勢力として出てくる中国の「八仙」は悪魔くんのことをこう評している。
人間の頭はそれぞれドングリの背くらべのように同じように作られているものだ。たとえノーベル賞をもらう人でもそこいらのサラリーマンとそう違う頭の構造はしていないものじゃ<中略>
この地上はそれぞれ「凡庸の徒」が集まり調和を保っている<中略>
だから我々が神に変わって人類の調和を保つために(悪魔くんを)葬るのだ。
ノーバル賞受賞者も大したことないと言い切る賢人が恐れる知的存在、それが悪魔くん!
そんな大天才の主人公が望むのは一体なんなのか!?
主人公の目的は「全人類の平和」
悪魔くんの目的は悪魔の召喚である。そして、その力によって全人類が平和に生きれる世界を創造するのが目的である。水木しげる漫画にしては圧倒的な正統派ヒーローなのだ。
同じ作者の鬼太郎と比べてみよう。鬼太郎はタバコを吸い、女性にうつつも抜かす。そして必ずしも人のために動かない。何よりヒーローとは言い難い見た目である。そもそも。
これに対して悪魔くんは、平和の為に活動する全うな正統派ヒーローだ。これは水木漫画としては珍しい。
ちなみに悪魔くんのベースは、ゲーテの「ファウスト」、悪魔メフィストフィレスに魂を代償に望みを叶えてもら博士の話だ。
そんな悪魔くんはどんな運命を辿り何を考えるのか、気になった方は是非ご一読を。こっから先は与太話。
「悪魔くん」と「ワンパンマン」同一人物説
「ワンパンマン」流行っている。アニメも放映され絶好調。ONE先生の原作も絶賛連載中!
ONE先生:ワンパンマン
「ワンパンマン」の主人公サイタマはどんな敵もワンパンで倒してしまう、腕力レベルマックスなヒーロー。
強すぎて敵との戦いに全く感情が動かない。退屈しているヒーローだ。彼の望みは市民の平和であるが、一方で自分と互角に戦える強敵の出現も求めている。
...これは、悪魔くん通じるところがないだろうか。
悪魔くんは知力レベルマックスの主人公、ワンパンマンは腕力マックスのヒーロー。
特徴 知力マックス / 腕力マックス
望み 人類の平和 / 市民の平和
望み② 悪魔の召喚 / 強敵の出現
↓これを抽象化すると
特徴 能力が突き抜けた存在
望み 人間世界の平和
望み② 人間の脅威となる存在の出現
同じだ。
どちらも凡人からかけ離れた超人が主人公で、その力ゆえに浮世離れし、達観し、ひょうひょうとしている。
平和の願っている一方で、その平和を脅かす存在を望んでいる。これはもう悪魔くん=ワンパンマンと言える。
人はなぜ異常なキャラクターに惹かれるのか
僕らが彼ら突き抜けた存在に惹かれてしますのは、自分とは異なる境地に達した人物に世界はどうみえているか?を知りたいからだろう。
僕らは日常的に「力」を求めているが、
- 結局その先には何があるのか?
- 無批判に「力」求めているけどそれは正しいのか?
- その境地は幸福なのか?
- そこに向かって大丈夫なのか?
そんなことを知りたいのだろう。
もちろん漫画以外でも、スポーツでも芸術、各分野のトップがその疑問に応えてくれる。けれど、人知を超えた存在は漫画の様な創造物でしか表現できない。
悪魔くんではそんな需要に応えた作品だ。
妖怪や河童達の人知外視点から、人間世界を風刺的に描いてくれた水木御大、心よりご冥福をお祈りいたします。
エロイムエッサム エロイムエッサム!!