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没頭できることを求めて

メイドインアビスの何が凄いのか考えてみよう。

現在絶賛放映中のメイドインアビス、漫画喫茶で最新刊まで読んでもの凄〜く面白く、今年読んだ漫画No.1になりそうな勢いなので、その面白さの源泉を考えてみたいと思う。

読んでいない人の為に簡単に説明すると、上記の少年少女が「アビス」と呼ばれる大穴を下降しながら冒険する話だ。トルネコよろしく下の方に行けば行くほど強いモンスターがいて難易度が上がっていく。そして、そのアビスには「呪い」と呼ばれるものがあり、上昇すると体調が悪くなったり死んじゃったりする。つまり、下がっても地獄、上がっても地獄、緩やかな自殺の物語なのだ。

 

 

世界を創る

さて、物語とは「非日常を描く」ものであるが、その非日常がどれだけぶっ飛んでいるか、これはその作品を評価する際の1つ指標となる。ただ、単にぶっ飛んでいればいいと言う訳ではなく、それは読者や視聴者が理解できるギリギリ範囲でなければならない。そうでなければ単なる「トンデモ本」とされ、見向きもされない。

つまり「受け手の腑に落ちる、この世ならざる世界を創れるか?」ということになる。ドラクエでもFFでもポケモンでもワンピースでも何でもいい。モノづくりも志す者は世界を創らねばならぬのだ。そして結論になるであろうが、メイドインアビスはこれを非常に高いレベルで達成している。

 

如何に狂った世界を創るか

世の中には良い意味で「頭おかしい」と思える作品がある、例えば永井豪先生の「デビルマン」であり、最近で虚淵玄氏脚本の「魔法少女まどか☆マギカ」もそうだ。ただ、どちらも素晴らしい作品であることは名言した上で、これらは全く新しい世界感かというと、そういう訳でもない。

例えば「デビルマン」は文字通り悪魔軍と神軍の戦いであり、ミルトンの失楽園をベースにしていると言われいる。また「魔法少女まどか☆マギカ」の世界感は輪廻と、菩薩としてのまどかなど、強い仏教感を伺えるし。インキュベーターのキューベーの口からも「エントロピー」や「相転移」といった物理の専門用語が出てくる。

これらの頭のおかしい作品は、そういった意味で常識的なのだ。

 

如何に常識的に常軌を逸するか

この話を始めるに当たって、具体例として登場させたいのが宮崎駿氏である。こと日本で生活し、彼を知らぬ方が難しいので紹介は割愛するが、彼こそ「この世界を創った奴がヤバい!」殿堂入りの猛者である。彼は「風の谷のナウシカ」を創造した。

 この漫画を読んだことがあれば出来ると思うが、一言で言うと頭おかしい。かつ、それまで想像もしない世界を見せてくれた。何をどうやったらこんな世界の創造できるのか?そう思いながら終始圧倒されて読破した。長くもないが短くもない人生の中で、それまで全く見たことのない世界を見たことを素直に驚き、そして、これこそがオリジナリィなのだと思った。

火の7日間、巨神兵、トルメキア、ペジテ、土鬼、腐海王蟲、いづれも全くの虚構でありながら、ありありと実在感を持って作品に登場する。荒唐無稽な世界と人と生き物でありながら、物語は一切破綻せず、彼らは実在した。

ではこの実在感はとこからくるのか?

 

如何に細部にこだわるか

ズバリ細部である。その虚構が世界に本当に存在したらどうか?重さは、大きさは、どう使われる、どう呼ばれる、なぜそう呼ばれる?etc.世界を創っている本人が本当に存在すると思っていれば、作品内では本当に存在することができるし、それを読者が信じればそれは実在するのだ(なぜなら人間は認識したものを現実だと思うから)。

その細部が密であればあるほど、世界は実在を帯びる。

 

もしかしたら凄いところまでいっていまうかも

さて、メイドインアビスの話に戻ろう。正直5巻までは「細部にこだわった凄い漫画」だった(日本語しておかしいが)、それが6巻でアビスのさらに深部に進むことのよって、1つレベルが上がったように思う。想像の上の創造とでも言うべきか、

アビスという世界の完成度がヤバい

 

結論を繰り返そう。面白い作品の1つの指標に、世界観の独自性というものがある。そして、メイドインアビスは非常に完成度の高い世界観を創造している。

これはもしかしたら、もしかしたら凄いところまで連れて行ってくれる作品になるかもしれない。せっかく同時代に生きているので、リアルタイムで楽しむのがオススメです!