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元全国2位が教える【受験日本史】~其之弐~なぜ山川日本史の教科書はつまらなく、オリラジあっちゃんの解説は楽しいのか

前回が予想以上に反応良くてビックリしてます。反応を頂いた皆様ありがとうございました。今回は山川の教科書について、話をしたいと思います。

今回は皆(特にできる人)が絶賛している教科書に苦言をいう事になるので、大変心苦しいのです。しかし、この際ハッキリ言わせてもらいます。山川の教科書は面白くないです。

実は教科書と名が付くもの全般が面白くないので、山川出版だけが悪いわけじゃないのですが、日本史教科書中で一番メジャーなため日本史の益々発展のため、勝手に一肌脱がせようという事です。 

構成としては、つまらない理由→その原因→対策という流れになってます(多分)。

 

山川教科書はなぜつまらないのか

さて、今回も先に結論を書いてしまいましょう。

山川日本史は感情を排しているからつまらない

人間が覚えられるものは大きく2つしかありません。繰り返したものと、感情を伴ったものです。

繰り返し方はなんとなくわかると思います。毎日通る道、良く会う知人、テレビによく見る人、これらは好きだろうと嫌いだろうと気が付いたら勝手に覚えてます。

感情の方が実に人間的で、喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、ここら辺の感情を伴ったものは容易に思い出すことができます。飛び上がるほど嬉しかったこと、はらわたが煮えくり返るほどの思い、死ぬと思った恐怖、眠れないほどの興奮、こうした幸不幸は容易に思い出すことができます。

アイドルやゲームや鉄道といったマニアの方は、繰り返し見ている部分もありますが、それ以上に快の感情が伴っているからこそ膨大な知識を蓄えることができるのです。

(逆に考えてほしい、1度しか見ず、一切感情が起きなかったものを覚えられるとは到底思えない)

教科書は無味乾燥です。起こったことが年代順に淡々と、なんの面白みもなく書かれています。読み方を知らない生徒が、これで何か感情を起こすハズがなく、結果、面白いと思うことも、記憶することもできません。

教科書に書いてある出来事を、喜んでいいか、怒ったほうがいいのか、哀しむべきなのか、笑った方がいいのか。感情のパターンや常識のパターンの蓄積がないと、教科書の記述にどんな感情を抱いていいのか分かりません(本当はどんな感情でもいいんだけど、面倒だから感情を起こさない)。そうなると無感情→無関心→知らね、っという具合になるのです。

教科書は感情を排しているから面白くないし、記憶にも残らない。じゃあ逆にするとどうなるのか?

オリラジあっちゃんの授業はなぜ面白いのか

オリエンタルラジオのあっちゃんこと、中田敦彦さんがしばしばテレビで歴史の授業をしています。彼の授業は実に面白い。それは何故か?人物や出来事にガンガン感情をぶち込むんでいるからです。

あっちゃんさんの主な手法は、まず登場人物にフォーカスを当てる。その歴史上の人物が、いかに凄いのか、どのくらい偉大なことをやったのか、それを例えを入れながら紹介する。ここで大事なのが、その人物が「今」いたらどれくらいヤバイかという風に説明している点です。これによって、聞いている生徒は、その人物を身近な人として感情移入できるようになります。

そうやって登場人物に感情させて置いて、バーンとインパクトのあるその人物の逸話や出来事を出す。ここまでやれば、後の興味の持続は容易です。まとめると、

 

登場人物に感情移入→その人に関わる出来事を追体験

この構造です。ご本人の言葉をお借りすれば

推しメンを作る→そこからの関係で歴史をみる

ということになります。

 

氏は感情移入の為に生徒を良く煽ります。「これおかしいと思いません?・なんでこんなことしたんだと思います?・これヤバいですよね?・マジで最低なことをやらかしてます・この時完全に調子にのってます!」等々。こうして気がついたら興味を抱いてしまってます。しかし、残念なことに山川教科書はわざわざ僕らを煽ってはくれません!!!

もしかしたらあなたは、大河ドラマといった時代劇や歴史ドキュメンタリーで見た内容は覚えているかもしれません。其れも人物や出来事に感情が乗っかった結果です。僕らがが見たいのは無味乾燥な事実ではなく、人間ドラマなのです。そして、それに必要なのは愛憎や怨恨といったドロドロの感情なのです。

  

結論:教科書は感情に訴えないからつまらない、そしてオリラジあっちゃんは感情に訴えてくるから面白い。

 

なぜ教科書は感情を排するのか

さて、教科書が感情を排しているから面白くないのはわかった。では、なぜこんな国益を損ねるようなことをするのだろうか?日本史や世界史がもっと面白くなれば、国際教養人()がもっと増えて国益にかなうはずである。これには出版社の問題ではなく、日本史という教科の特殊性が関わってきます。

日本は戦前教育の反省から、特定の思想教育をしてはいけないという事になりました。戦前日本は国(国民)総出で戦争に労力をと注ぐ必要があり、教科書内に戦意を鼓舞する内容が盛り込まれていました。そしてそれらは終戦後、GHQからいかんぞ言われて「墨塗り教科書」になりました。ここら辺の経緯は、あなたも何となく聞いたことがあると思います。

歴史はその内容故に、思想色が強くなりがちです。国(政府)は基本的に自国の利益を最大化するように行動します。なので、国民に愛国的な教育をしたいと思うのは当然の事です。しかし、あからさまに自国を正当化したり、特定の陣営を擁護する教育は許されません。そこ結果、こんな感じになります。

 

起こった客観的事実のみを書いて、善悪は良し悪し判断は読者に委ねる。

(もちろん国家は直接教科書を作りません、民間に作成させ「検定」という形で採用する教科書を選ぶ制度になってます。リンク→3.教科書検定の趣旨:文部科学省

歴史がヒトの歴史である以上、その人物や国の思いや考えは避けがたい。どの陣営にも寄らず中立を保たないければいけないのなら、客観的事実を書くしかない。だから山川日本史はつまらない。極力感情や形容詞を排除し、徹頭徹尾、事実の記述・羅列に終始している。これは仕方がないことなのだ。

(極力と書いたのは、実は形容詞に中立な言葉はなく、言葉の性質という壁によって100%の中立ありえない。ヒトが言葉を操る生物である以上100%の中立は実現不可なのだ。)

 

結論:歴史はその教科の特性上、不偏不党、公正中立な立場も目指さねばならず、そのせい教科書は感情を排し、結果つまらない。

じゃあ、山川の教科書を面白いと思えない受験生はどうすればいいのか?答えは簡単、感情をこめてる教科書を使えばいい。

巷には、予備校(講師)が出す本が溢れている。みんなわざわざ読み解くような苦労はしたくない、分かりやすいのがいいのだ。じゃあなんで分かりやすいかと言えば感情が入っているからだ。筆者の主観で、出来事の良し悪しや善悪を切ってくれている。教科書じゃないから検定もいらない、著者の好き嫌いを思う存分言えるのだ。こういった参考書は解釈が分からない受験生に、歴史の見方を教えてくれる。

山川日本史を面白いと思えないなら、無理して使い続ける必要はない。ささっと有名人気講師の本に切り替えよう(っていうか既にそうしてるか)。山川日本史から去るのは逃げじゃない、現時点での目標は志望校合格だ。教材はその「手段」にすぎない、目的の為の手段にこだわっちゃいけない! 

The end justifies the means!!(ヒュ〜!)

 

 

感情の入った面白い歴史

ここまでの話を改めて整理しよう。山川の教科書がなぜつまらないかを説明し、それが教科書である以上逃れられないことも説明した。そして受験生目線の対策は、感情の入った面白い教科書や教材を使う、という結論だ。

なのでここからは、それに適した教科書の補助になるものを紹介していきたいと思う。要は山川教科書に感情を乗せるための補助教材だ。

 

感情教材選択の注意点

例えば歴史題材に扱ったマンガとして、大人気の「キングダム」などがあるが、この類は残念ながら補助教材としては今一歩だ。キングダムの紙面は戦いや戦術の部分が圧倒的に多く、費用対効果が薄い。例えば現時点で46巻販売されているが、仮に一巻20分で読んだとして読破に15時間かかる。

このように、歴史的に見て短い(そしてそんなに大量に出題されるわけでもない)期間に詳しくなっても歴史の点数は上がらない。

日本史でいえば戦国時代である。戦国時代にやたら詳しい人がいるが、そこだけマニアでもテストで高得点を取る事は出来ない。戦国時代でおぼえることは、有名武将の名前×家訓(余力あれば、領地と戦も)それも5名分ぐらいで十分だ。わざわざマンガやドキュメンタリーで何十時間も費やす必要はない。いや、必要なくはないけど、膨大な時間をかけるのは効率が悪い。

艦隊コレクションこと「艦コレ」も、刀を擬人化した「刀剣乱舞」もこの視点から適さない。戦艦マニアになっても刀の名前覚えても、残念ながら出ないんだよ!!興味という点では決して悪くはないが、受験勉強という意味ではズレてしまう。

以上を鑑みて「ある程度広い年代で、かつ受験にも良く出るとこ」これが選択の基準となってきます。ここからそんな基準をクリアした、オススメの感情補助教材を挙げていきます。便器上教材と言っていますが、基本的にはエンターテイメント性の高いものばかりなので、肩ひじ張らなくても大丈夫です(/・ω・)/

 

オススメの感情教材

ここからいくつか作品を挙げますが、決して全て見るのを薦めているわけではなく、受験勉強の息抜き、受験生でなければ事前準備ぐらいの気持ち、で興味あるものだけ見てみて下さい。

 ドラマ版:坂の上の雲

割と最近のNHKの傑作、普段大河をみない僕でも思わずみちゃった。なぜか日本でトップクラスに資金が潤沢なNHK(良し悪しは置いといて笑)が、総力を挙げて3年もの月日をかけて制作したドラマ。なんて贅沢な作品!当初は「スペシャ大河ドラマ」と名前まで仰々しいものになっていた。

この作品から学んで欲しいのは、明治を生きた人間のメンタルである。既に説明したように、歴史も面白く学ぶ為に大事なのが「感情」である。当時の人々に感情移入することによって、歴史上の出来事をまるで自分のことの様に体験できる。そうすれば、文字で勉強する時も、イメージの圧倒的アドバンテージによって学習を進めることができる。

さて、日本史を勉強するとわかるのだが、単に戦争はダメ、戦争は怖い、と言うのではなく「なぜ日本は戦争をしたのか?」という部分を必ず考えなければならない。当時だって戦争が大っ嫌いで反対した人たちはいた(与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」は有名な日露戦争反戦歌だ)、にもかかわらず戦争をしなければならなかったのはなぜか。

そんな風に、まるでミステリーも味わう顔様に大いに感情移入しながら見てみれば。知識として日本史の点数が上がるだけではなく、その後の人生に活かせる知恵まで身に着けることもできる。

受験生にそんな余裕ないと思うから純粋にエンタメとしての消費で十分だよ(^◇^;) 

 

 その時歴史が動いた

薦めといて何ですが、これを見るのは時間もお金もかかるので、特に苦手な部分を一点買いするのがいいと思います。ちなみにこの番組は既に終了してて、後継の「歴史秘話ヒストリア」が現在放送中です。本編も40分程度と寝る前に見るのにちょうどいいです。

似たようなコンセプトで「その時歴史が動いた」「英雄たちの決断」なんかもあります。もしかしたら自宅のビデオデッキに眠っているかもしれないので、買う前に家にないか探してみてね!!

 

日露戦争物語
日露戦争物語(1) (ビッグコミックス)
 

 1967年(明治元年)に生まれた秋山真之を主人公にした漫画です。明治初期~日清戦争までがハイパー強くなれます。作者の江川達也氏は嫌だったらしいですが、司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を元ネタにしているので、内容も面白いです。

ただ、1~10巻で十分です。それ以降は受験レベルを超えた範囲(単に戦争描写が細かくなるだけ)で、殆ど役に立ちません。日清戦争開戦までは文句なしでオススメです。

 

マンガ日本の歴史

要は各出版が出してる学習漫画の事です。学習を銘打ってるので、本当は薦めたくない、だって純粋なエンタメじゃないから。ただ、過去の自分も使ってので一応入れておきます。

僕が受験生の時は小学館のしか知りませんでしたが、今は各出版社から実に様々が工夫がされたものが出版されています。(↑これは「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木先生が書いた表紙)こんなカッコいい表紙ある?ただ、カッコいいのは表紙だけのこともあるから注意!

講談社、学研、小学館KADOKAWAの4社を薦めるが、本屋さんに行って一番絵が好きなものを選んでね!たった20巻前後で日本史の最初から最後までを一気学べます。

 

風雲児たち
風雲児たち 1巻 (SPコミックス)
 

レジェンド漫画家みなもと太郎先生が、幕末を描く為にわざわざ(?)関ヶ原の戦いかた描き始めたギャグ漫画。この漫画のいいところは江戸時代を整理できることだ。

江戸時代は長い、265年もある。そして、現代の私たちの日常と未だに繋がっている部分が多い(芸能や地名など)、そしてなにより入試によく出る!めっちゃ出る!! 

寛政の改革天保の改革田沼意次井伊直弼やら字面がよく似た用語が多い。ここら辺を整理できれば江戸時代を一気に得点源にできる。一応ギャクマンガで読みやすいので、こちらもオススメです。

 

今回のまとめ

日本史は歴史はその教科の特性上、不偏不党、公正中立な立場も目指さねばならず、そのせい教科書は感情を排し、つまらなくなっている。だったら日本史を楽しいと思えない受験生は、まずはエンタメから日本史を味わい、そので得た感情を日本史の勉強にフィードバックする。そうすると日本史の勉強が楽しくなるよ。

 

*前回