今回は受験英語のの定番、レベル別英語長文6に収録されている英文の元ネタを調べてみます。
受験生的には大学から出題された問題ですが、受験問題には作問者がいます。その作問者は一体どこから英文を持ってきたのか。その探究です。
時々収録されている問題が簡単すぎるなど言われますが、全くの誤解です。
調査結果を見ればわかりますが、ネイティブがネイティブの知的層に向けて書いた文章です。一部単語を変えたりしてはいますが、元ネタ自体は決して平易に書かれた文章ではありません。
簡単すぎるという方は原典も掲載しておりますので、ぜひそちらもご挑戦ください。
また、この記事を読むことで、購入前に掲載されている英文を読むことができ、どのくらいの英文が採用されているか確認することができます。
それでは調査結果をどうぞ。
- 過去問出題校
- 1.The Undiscovered Self
- 2.Victorian Science and Victorian Values
- 3.CLONING HUMAN BEINGS
- 4.出典確認中
- 5.Ancient DNA Untangles Evolutionary Paths
- 6.Us and Them
- 7.Keep it cofidential
- 8.The Shadow Lines
- 9.The Lighthouse
- 10.Down to Earth Sociology
- 東進のレベル6が終わった人は
過去問出題校
レベル別6に収録されているのは以下の大学の過去問です。
- 慶應義塾大学 理工学部
- 早稲田大学 教育学部
- 慶應義塾大学 理工学部
- 上智大学 法学部
- 早稲田大学 教育学部
- 上智大学 法学部
- 上智大学 経済学部 理工学部
- 東京大学
- 東京大学
- 慶應義塾大学 総合政策学部
英文を大学で語るの稚拙ですが、いわゆる東大早慶上智の過去問が収録されています。
それでは出題英文の出典をみていきましょう。
1.The Undiscovered Self
出典は心理学の大家、カール・グスタフ・ユングの著者「The Undiscovered Self 」でした。
ユングは師匠のフロイトと共に、大学の一般教養でほぼ触れる心理学者で、大学生になると知ってて当然レベルの偉人です。
さて肝心の内容については、こちらに本文を引用した記事があります。
https://frithluton.com/articles/self-knowledge-based-theory/
また、いい感じに2分にまとめた動画もありました。英語ですが、言いたいことは何となく伝わると思います。
ユングについてもう少し詳しく知りたい人は、彼を題材にした映画がちょくちょくあるので、息抜きがてらどうぞ。
2.Victorian Science and Victorian Values
出典はジェームズ・パラディスの「ニューヨーク科学アカデミー年報」のVol.360に収録されています。
学術誌に掲載された英文で、出版年度も1981年の古いので、堅め英文の印象です。
3.CLONING HUMAN BEINGS
出典はアメリカの倫理学者マーサ・C.ヌスバウムの「Clones and Clones: Facts and Fantasies About Human Cloning(1998)」です。
かなりの著書を持った人ですが、その多くが大学出版であることを考えれば、かなり学者畑であることがわかります。つまり、大学生や専門家向けの本が多い著者です。
これを翻訳したのが「クローン、是か非か」です。
さらなる元ネタは大統領への手紙
これは探すのにかなり苦労しまいたが、出典は米国生命倫理諮問委員会からホワイトハウス、大統領への手紙でした。
出版物ではなく、機関からの大統領への報告書だと思ってください。ちなみに書かれたのは1997年。
https://bioethicsarchive.georgetown.edu/nbac/pubs/cloning1/cloning.pdf
こちら↑が報告書の全文ですが、このp32からが引用部分です。
クローン羊ドリー誕生という出来事に対して、またはクローン技術に対してどう捉えるべきか、大統領への助言が書かれています。
報告をもらった大統領になった気分で読んでみてください。より芯に迫った読解できてオススメです。
4.出典確認中
上智大学法学部からの出題ですが、現在出典確認中です。
代わりに、本文で引用されてるであろう、国際歴史学者入江昭さんの著書を紹介しておきます。
5.Ancient DNA Untangles Evolutionary Paths
元ネタは2002年に書かれてた雑誌「サイエンス」の記事でした。
この↑リンクから直接記事が読めますが、画像が不鮮明で見にくいです。
こちらに一部文字起こしされてるので、内容を確認したい方は下のリンクをご参照ください
https://www.proquest.com/docview/213598496
ちなみに雑誌「サイエンス」は、1880年に創刊され、米国科学振興協会 (AAAS) から発行されています。米国科学振興協会の略称は「AAAS」ですが、これはAmerican Association for the Advancement of Scienceの頭文字をとったものです。
理系の研修者にとって掲載や引用が目標の一つとなっているほど、世界で最も権威のある学術雑誌の一つです。以前は日本向けのWebサービスがあったようですが、今はやってないみたいです。
6.Us and Them
こちらも4問目に引き続き上智大学法学部からの出題です。
出典はJim Carnesの「Us and Them: A History of Intolerance in America」です。
アメリカのおける不寛容の歴史とその心理を解説した本で、
- 1660年:ボストンでクエーカー教徒の信仰を理由に処刑されたメアリー・ダイアー
- 1838年:モルモン教徒ミズーリ州から追放
- 1885年:ワイオミング州ロックスプリングでの中国人鉱山労働者の襲撃
- 1890年:アラバマ州モービルでのKKK(クー・クラックス・クラン)の活動。
1981年:ニューヨークのクラウンハイツで起きた暴動
など具体例を出しながら展開していきます。
本編はこちら↓をご参照ください。
7.Keep it cofidential
上智大学の経済学部、理工学部からの出典となっていますが、元ネタは雑誌エコノミストです。
勝手な偏見として、日本の東洋経済と同じような立ち位置で、大人の男性が読んでいる雑誌でしたが、こちらの記事でも同じことが書かれていました。
こんな「エコノミスト」の読者は世界平均で87%が男性だ。平均年間所得は17万5000ドル(約1300万円)、年齢の中心は47歳という。「エコノミスト」の読者といえば、エリート層、しかもやや高齢(例えば政治家や企業の経営陣など)というイメージがある
英ニュース週刊誌「エコノミスト」とはどんな雑誌? (上)(小林恭子) https://news.yahoo.co.jp/byline/kobayashiginko/20130830-00027710
8.The Shadow Lines
8~9問目は物語形式の出題が続きます。
8問目は東京大学2004年からの出題、出典はイントの英語作家アミタヴ・ゴーシュの「シャドウ・ラインズ - 語られなかったインド」です。
元々は1989年に発表された作品で、インド文学の最高峰サーヒトヤ・アカデミー賞も受賞しました。
日本人にとってはとっつき難い題材ですが、英語の勉強をしながら良質な文学作品を楽しめると思えば一石二鳥の教材です。
英文はこちらで確認できます。出題箇所はp166の真ん中あたりからです。
日本語版も2004年に発売されています。インドの歴史や文学に興味がある方にはオススメです。
9.The Lighthouse
9問目は東京大学2005年の過去問から出題。
出典はイタリア系アメリカ人アルトゥーロ・ヴィヴァンテの「灯台」です。
さらに出典を紐解くと、雑誌「The New Yorker」1968年1月20日p26に掲載された作品で、単品の作品としては販売されておらず、短編集の中に収録されています。
元ソースはこちらです。
短編集
日本語で読みたい場合は東大名誉教授で翻訳家の柴田元幸氏がまとめた短編集に収録されています。
東大が灯台の問題を出題ということで、高度なギャグかと思いましたが多分勘違いです。
子供が見る世界と大人が見る世界の違い、あるいはその中間を描いた良作で、隠れファンも多い作品です。
10.Down to Earth Sociology
最後の10問目は慶應総合政策からの出題。
出典はジェームズ・M・ヘンスリンさんの「Down to Earth Sociology」でした。
現時点で販売されているのが14版なので、なかなか売れている本です。
「down to Earth」は「現実的な」「地に足ついた」的な意味で、タイトルをあえて訳すると「実践社会学」や「社会学入門読本」あたりになりそうです。
本文はグーグルブックスで確認できました。以下の部分をご参照ください。
チャプター2「What Is Sociology? Comparing Sociology and the Other Social Science」からの引用で、p12の後半「The Example of Juvenile Deliquency」からの出題です。
一つ前の版も確認しましたが、表紙が毎回イケイケな若者達です。
この問題は慶應の英語にも収録されています。複数回引用されているのは、それだけ良問の証明になります。
ぜひ何度も解いてみてください。
東進のレベル6が終わった人は
この参考書が終わった人は志望校の過去問へ移行してほしいですが、長文問題集を続けたい受験生には同レベルの以下の問題集をオススメしておきます。
出題英文が300~400語で、音読やシャドーイング教材として最適です。
英語の読み方を懇切丁寧に教えてくれる問題集。2021年に発売されたばかりです。