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戦争映画、上から見るか下から見るか

戦争映画やパニック映画を誰しも1度は見た事あると思う。戦時下や宇宙人襲来や大災害などの非常事態はまさに非日常であり、それ故題材として描かれやすい。今回はそんな戦争映画の見方を1つ紹介したいと思う。

宇宙人襲来はギリ分かるとして、災害は戦争か?と思われるかもしれないが、平和な日常が失われたら…それはもう戦争じゃろがい!!…という精神でご了承願いたい。

さて、そんな非常事態映画を見ていて、ある法則に気が付いた。これが分かればその映画がどんなテイストでどんな展開になるかがある程度推測できるようになる。この見方が、あなたの映画ライフの一助になれば幸いである。

 

戦争映画、上から見るか下から見るか

映画の中で非常事態が起こる。その規模はまちまちであるが、その出来事に対してどの視点から描くのか、すなわち主人公はどこからその出来事に向き合うのか。これによって、映画の性質が変わって来る。視点とその特徴は以下の3つである。

 

  • 上から見る:事態を把握している上層部
  • 中から見る:現場にいる兵士や職業人
  • 下から見る:自体を一切把握せず巻き込まれる民間人

これだけだと良く分からないと思うので、一つだけ例を出してみよう。例えば宇宙人襲来という軸でこれを当てはめると、

  • 上から見る:インディペンデンスデイ(大統領視点)
  • 中から見る:世界侵略ロサンゼルス決戦(兵士視点)
  • 下から見る:宇宙戦争トムクルーズ視点)

こんな感じだ。便宜上、上や下などという言葉を使っているが、別に差があるとは思ってないので悪しからず。これからそれぞれ視点の特徴についてもう少し説明していこう。

 

上から見る

上から見るとは戦争を俯瞰的な立場から見ること、つまり事態をある程度把握している政府高官や軍の上層部から描かれる物語だ。特徴を上げるとこんな感じ。

  • ジャンル:娯楽大作はコレ、政治劇もコレ
  • 敵:ハッキリした敵がや目標が設定されている
  • 余韻:ちゃんと決着する、ハッピーエンドになりやすい。

説明するまでもないかもしれないが、国家規模の物語になりやすい。なのでまず規模がでかい。戦力をガンガン投入する。ドッギャンばったんガラガラドーン!!娯楽大作にうってつけな視点である。

また、聞いたことあるかもしれないが、戦争は外交の1手段である。つまり、戦争は決して目的ではなく、対外的な政策である外交手段の1つである。そして外交の決定権を握るのは政治家や官僚といった上層部である。 こういった政治劇の場合、戦闘シーンは殆ど無く、密室での会話劇が中心となる。

そして、事態がキチンと収束する。戦争なら勝利し、宇宙人が来てたら追い返す、災害も収まる。これらが上から戦争を見た場合の特徴である。

 

なんつったてアメリカ大統領が話の中心にいる、これ以上の上層部はいない。 敵の正体も割とはっきりするし、世界のどこが攻められてるとか、概ね状況が把握されてる。「上から見る」の教科書的な作品。

 

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ

 

広告コピーの一つに「ニッポン対ゴジラ」とあったことからも分かるように、主人公矢口蘭堂が政治家だったことからも分かるように、シンゴジラも「上から見る」の一つだ。ゴジラの現在地、正体など、分かっていることは観客も同時に知れるようになっている。

防衛軍や民間人など、作品によっては中や下から見ることがあるのもこのシリーズの特徴だ。

 

 ウサマ・ビン・ラディンを追うCIA分析官の物語だ。がっつり政治劇で「いかに目的のビンラディンまで辿り着くか?」が物語の焦点になってくる。その手段として拷問や司法取引が行われるのだが、それらの描写が実際に政治的論争にまで発展した。それでも様々な映画際で賞をかっさらっていった作品だ。

全然関係ないけど、主演のジェシカ・チャスティン、めちゃめちゃ好み。彼女の役どころは中間管理職的で、事務方の指揮官という感じなので、上から視点と中から視点の中間的な話だ、それ故に目標はしっかり達成するが、後味はあまりよくない

 

中から見る

中から見るとは 、戦争をその戦闘がまさに行われている現場から見ることである。戦いの渦中にあるので、先ほどのような俯瞰的な視点は薄れ、むしろ目の前の敵(目標)をいかに攻略するかという部分に作品の盛り上がりがくる様になっている。

  • ジャンル:重厚な人間ドラマ、名作として語り継がれるのはコレ
  • 敵:途中からハッキリしてくるが、割とぼんやり
  • 余韻:無事解決!とはならなず、切なさを残す
  • その他:戦闘シーン多め

主人公は兵士の一人のパターンが多く、この個人の非凡さが作品のフックとして使われる。それゆえ英雄譚が多く、名作と呼ばれる作品が多い!いくつかオススメを紹介するが、いずれもどこかで見聞きしたことがある作品だろう。

 

映画史に残る冒頭30分。プライムビデオで見れるから、騙されたと思って最初だけ見て欲しい。初見の時はあまりの自体に言葉が出なかった。連合国15万vsドイツ軍4万のノルマンディー上陸作戦。その連合国側の視点の戦争。

 

ソビエト軍のスナイパー(ジュード・ロウ)視点の対ドイツの戦争映画。このスターリングラードと先のプライベートライアンで戦争映画2大巨頭(と思ってる)。どちらも圧倒的な映像の力で、戦争がいかなるものか物語ってくれる。戦争がいかなるものか、言葉だけでは中々言い表せられないが、映像によって見ている者にとうとうと語りかけてくるものがある。

戦争ダメ!絶対!!

 

今年公開されたハクソーリッジも中から見る映画で、人命救助の英雄譚である。米国vs日本の米国視点の話ゆえ、日本時としては心苦しい場面が多い。人は意図せず愛国心を持つものだと実感させられた映画である。詳しくはこちらをどうぞ→2017年下半期 劇場公開映画ざっくり感想まとめ - 蔵ログ

 

これまでが第二次世界大戦が舞台の話であるが、ここからは最近の戦争が舞台になっている。イラク戦争でレジェントとなった狙撃手の話。トイレも行けず、スナイパーって大変なんだな…。

 

こちらもイラク戦争。主人公が爆弾処理班という珍しい設定。「極限状態に慣れてしまったある種の人たちは、そこでしか生の実感が湧かなくなるんだな」と思った作品。戦争云々というより、職業人としての軍人の誇りと哀しさにフォーカスした1作。

「上から見る」で紹介したゼロ・ダーク・サーティと同じ監督で、こちらは第82回アカデミー賞作品賞を受賞した。

 

下から見る

下から見るとは、事態の状況を掴めない民間人の視点だ。航空機も持ってなく、基本地上から状況を見上げるしかないので、この表現にしている。

  • 事態の状況がわからないし、解決法もわからない
  • なので主人公が基本的に無力
  • だから人気がなく、興行的に失敗しがち
  • 戦闘がクライマックスにならない

とまぁ悪口めいたものを書いたが、何を隠そう僕が1番好きなジャンルはここだ。みんなもっとこの視点楽しめばしいのに!と思う。 この視点が人気が出ずらいのは分かる。多くの人は「俺つえー」状態が好きだし、事態を俯瞰的に見るのが好きだ。

だからそれを期待してこの視点を見るとガッカリすることになる。違う!この視点が描きたいのは人間であり生き様だ。ジャンル的に言えばヒューマンドラマ!!でも、なまじSFやアクションの面をしているから悲劇が起こる。この視点はヒューマンドラマを見るつもりで観賞するのがオススメです。

 

宇宙戦争 (字幕版)

宇宙戦争 (字幕版)

 

個人的に過小評価されてる戦争映画ナンバーワンだ。タイトルのせいでドンパチ映画を期待すると痛い目を見る。そんなものは「上から見る」に任せればいいし、そっちを見ればいい。

これは家族の話だ。起こっている事態は単なる設定に過ぎない。冒頭と最後でドムクルーズとその家族の関係はどう変化するか。そこに注目すればより一層作品が楽しめる。

映像で人をいかに描くか?この映画はその教科書的な作品でもある。来ている服や、話す単語、住んでる場所や友人、それらで主人公の状態がよく説明されている。こんな低所得のトムクルーズも珍しい。

 

韓国の単なるB級映画だと思ったでしょ?俺も最初はそう思った、ゴジラの出来損ないだと。でも違った、メチャメチャ面白かった。これも家族の話だ。韓国にいる少しおかしな家族、その一家から見た(ゴジラのような)怪物の話だ。

韓国の鬼才ポン・ジュノ監督作品だが、彼は作品はどれもどこか間が抜けた変な映画だ。スノーピアーサー以外オススメです!

 

 カンヌ映画祭で最高賞、米国アカデミー賞で監督賞と、名前ぐらいは聞いた事があるかもしれない。ピアニストと戦場という、およそ似つかわしくない言葉の対比が印象的な邦題である。

タイトル通り主人公は一介のピアニストだ、それゆえ戦争にただただ翻弄されるしかない。戦況によってじわりじわりと追い込まれていく様子は胸に来るものがある。

 

 さて、僕の生涯ベスト級映画の紹介だ。今までこの映画をオススメすると、「え?デイアフタートゥモロー?」「え?トゥモローランド?」とすっとんきょうな反応が返って来たが、今ならこう言えるゼログラビティの監督の作品だと。

この映画で衝撃だったが、出産の描写と、クライマックスの長回しだ。映画で出産シーンは珍しいが、さらにここまで丁寧に描写する映画も珍しい。そしてこの映画には3つの長回しシーンがある。その長いシーンの最初と最後、事態が大いに変化する。ただ長けりゃ良いってもんでもない、実に圧巻の長回しである。

凄ーく良い映画なのにじぇんじぇん人気ない!見てない人が大多数だと思うので、是非ご鑑賞あれ^^。

 

 

以上、戦争映画上から見るか下から見るか?でした。あなたはどの視点の作品が好きですか?