現代文の基礎問題精講が出たということで、早速購入してみました。
これまで難関大受験者向けに標準問題精講という一つ上のシリーズがありましたが、基礎問題精講はセンターや中堅大学受験者レベルに設定されています。
非常に使いやすく、内容的にも満足だったので、書籍レビューをしたいと思います。
基本情報
著者:長谷川晃
ページ数:192ページ
出版社:旺文社
発売日:2019/7/16
著者プロフィール
上智大学卒、上智大学大学院博士前期課程修了。私立高等学校に勤務の後、駿台予備学校をはじめ、塾、予備校で現古漢、小論文の指導にあたる。旺文社『全国入試問題正解』解答者。現代文の考え方、解き方の解説は、「記号読解」に基づいている。
最後に詳しく触れますが、問題文は入門8題、基本8題、実践8題の計24題です。ただし、入門編は問題文1つにつき問いも1問だけなので、実質的には16題だと思っておいて下さい。
対象レベル
国語が特に人にとっては難しくないと思いますが、本当に苦手な人にはちょっと厳しいくらいかなという感じです。偏差値45~50以上あればいけると思います。漢字や慣用句や語句の知識は必須ですが、それらが揃った前提の到達は偏差値60くらいです。
偏差値45~50レベルに達しない人は次のどちらかにまずは取り組んでみて下さい。船口先生の方がとっつき易い印象です。
出題大学一覧
問題文の出典は一番最後に載せますが、それとは別に出題した大学も載せておきます。レベルの参考にして下さい。(順番は出題順、コメントは個人の偏見)
基本編
中京大学:スポーツが強そう
国士舘大学:柔道が強そう、昔の尖り具合ヤバい
愛知大学:国立大学と間違われる私立
佛教大学:京都にある浄土宗系の仏教大学
立命館大学:関西私大の2番手
実践編
青山学院大学:キャンパスが綺麗
機央大学:きおうって読むんだ...
明治大学:校歌の出だしがカッコイイ
特徴3つ
これから、現代文基礎問題精講の特徴について述べていきますが、ただ特徴をならべても面白くないので、現代文の点数をあげる方法について述べながら特徴を説明したいと思います。
①-1 記号読解のアプローチ
現代文には2つのアプローチがある。
一つは背景知識や思想体系をたくさん知ることによって点数をあげるタイプ。もう一つは対比や言い換え、接続後からロジック的・論理的に点数を上げるタイプ。
もちろん最終的には両方必要ですが、後者の方がとっつきやすく、そして点数も上げやすいです。なので現代文の参考書の多くはこのスタイルを取っています。
例えば、現代文講師として有名な板野博行先生は「ゴロゴ解法公式」、出口汪先生は「出口システム」といった形で世に打ち出しています。
現代文ゴロゴ解法公式集1 センター試験編 (音声&映像講義付き)
- 作者: 板野博行
- 出版社/メーカー: スタディカンパニー
- 発売日: 2013/10/24
- メディア: 単行本
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本書、基礎問題精講も解法タイプで「入試現代文はゲーム」と冒頭で宣言しており、「記号読解」という言葉を用いています。
①-2 知識と解法の関係性
現代文の点数を上げるためには、背景思想知識と解法の両方が必要と述べました。しかし、解法の方が点数を上げには重要です。両者はどういう関係にあるのか、簡単にまとめて見たいと思います。
結論はこちらです
- 知識量が多い:読解スピードが上がる、問題に使うエネルギーが減る
- 記号読解が出来る:現代文で点数が取れる
現代文の試験では原則、思想の知識自体を問うことは出来ません。前提知識が有無に関わらず、本文から論理的に解答を導ける様にしなければなりません。
それが「解答は全て本文に書いてある」と言われる所以であり、現代文の解法が活躍する所以でもあります。
- 記号読解が出来る:現代文で点数が取れる
現代文が得意な生徒は読書量が多い傾向にありますが、読むことに慣れていれば単純に問題を読むスピードが早く、かつエネルギー消費も少なく済みます。
結果、大量に問題に取り組んだり、他の教科の休憩として現代文に向き合うことができます。
- 知識量が多い:読解スピードが上がる、問題に使うエネルギーが減る
大人になってから久しぶりに現代文を解いてみると、嘘のように簡単に解けてしまうことがあります。これは年齢と共に経験を重ね、様々な世界を知ることによって、背景知識や思想知識が高まった結果です。
結論:現代文で点数を上げるためには記号読解(=論理的思考)が必要。得意科目にするためには背景知識や思想知識を問題を丁寧に解きながら増やしていこう!
②レイアウトがいい
参考書や問題集のレイアウトは重要で、これによって学習のしやすさが大分変わります。
現代文の問題集といえば無味乾燥な文字ばかりのものが多いですが。基礎問題精講義はかなり見やすいレイアウトになっています。
3色刷り、問題文の論旨の流れが図解されているなど、ストレスなく学習できます。
本書は旺文社の出版ですが、ここ10年の旺文社の受験参考書のレイアウトは全体的に信頼してます。
出版社として、見た目に対する強いこだわりをビシビシ感じます。
③問題文の選定
ここは完全に主観ですが。問題文(素材文)の相性が良かったです。
先ほど説明したところの背景や思想を知っている内容が多く、解きやすかったです。
受験参考書なので好き嫌いだけで問題文を選んだりはしないでしょうが、感性や価値観に近しいものを感じました。
公式サイトで見ても入門編の出典は出てこないんで、このあと全ての出典を明記します。
実際に問題集に取り組んで、面白そうな本があれば是非読んで見てください!
最後に
本書はあくまで問題集です。内容、レベル、レイアウトの全ての条件がそろっていても、本気で取り組まなければ意味がありません。
是非、なんども何度も、著者以上に本書に詳しくなる気持ちで取り組んで見てください。そうすれば自ずと結果もついて来るはずです!!
問題文の出典一覧
入門編
①石黒浩:アンドロイドは人間になれるか
ここで書いてあることを映像でみたければ、想田和弘監督の「演劇」がオススメ。
②ちきりん:マーケット感覚を身につけよう
マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/02/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ちきりんさんの本は全体的に読みやすい。現代文の教材として使われる頻度が増えてるらしいので、将来のためのと受験のための両方兼ねれて一石二鳥。
③酒井邦嘉:科学者という仕事
科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 (1843))
- 作者: 酒井邦嘉
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 新書
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④養老孟司:カミとヒトの解剖学
養老孟司先生も割と現代文で見る気がする。
幸い、テレビにも時々露出しているので、何本が見ればなんとなく思想の傾向が掴めると思う。
⑤川端康成:心中
この本はその殆どを『掌の小説』(たなごころのしょうせつ、川端康成の掌編小説)からの引用?しているが、その掌編小説の一つが問題文の「心中」である。
恥かしながらこの問題集で初めて読んだが、あまりに引き込まれれしまったので解答後、思わず調べてしまった。
ショートショートの神様星新一先生が「なんど生まれ変わっても書けない」と絶賛したぐらい面白い作品でした。
現代文(に限らないけど)の面白いところは、こうして意図せず傑作に出会うことだと思います。
オーディオブック版もありました↓
⑥國分功一郎:中動態の世界
中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2017/03/27
- メディア: 単行本
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⑦数土直紀:自由という服従
数土(すど)ってすごい苗字。著者は学習院大学の数土教授。
⑧小笠原泰:日本的な視座
蟹瀬誠一, 高山宏, 鹿島茂, 小笠原泰, 森川嘉一郎, 長谷川文雄(敬称略)ら明治大学の教授陣で執筆した本からの引用。
大学生を経験したことある人なら分かると思うけど、学術書はやっぱり面白くない。
それを本来読みこなせるのが大学生なんだろうし、読み手のレベルが低いと言われてればそれまでなんだけど。面白いか面白くないかで言えば、やっぱり面白くない😭。
基礎編
①田村明:まちづくりの実践
日本(特に都市部)だと、確かに自治体が街づくりしているイメージはある。 東京で好きな区は文京区と千代田区。
②本田由紀:軋む社会
絶望的な若者は、絶望的すぎて楽観的に見えるって話。余計なお世話や!
③野口悠紀雄:「超」集中法
元官僚で大学教授、ピカピカ経歴の経済学者にして作家。「超」集中とは言っているけど、書いてることは2:8ことパレートの法則について。
読者層に合わせているのかわからないが、物事の掘り下げはそこまで深くなく、なんとなく表面を齧った印象がある。
氏が一世を風靡したのは「超」シリーズのヒットがきっかけだろうが、御多分に洩れず母が「超」勉強法を買って与えてくれた。
当時の自分はこのレベルの本もまともに読めなかったけど、少なくとも世の中には「勉強法」なるものがあると知るキッカケになった一冊だ。
今では勉強本が巷に溢れ、良書も多く本書の価値は相対的に低くなった。それでも、勉強法指南書を身近にした、パイオニア的本だと思う。
④白洲正子:たしなみについて
⑤小浜逸郎:人はなぜ働かなくてはならないのか
人はなぜ働かなくてはならないのか―新しい生の哲学のために (新書y)
- 作者: 小浜逸郎
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2002/06
- メディア: 新書
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働く意義とか意味とは人によって様々だけど、誰かの役に立つ、感謝される、そんな仕事ができたらいいと思っています。
⑥原田マハ:生きるぼくら
3回泣いた、3回濡れた。
⑦なかにし礼:歌謡曲から「昭和」を読む
武田鉄矢さんのラジオ「今朝の三枚おろし」でも、この本の特集回がありましたね。
⑧-1 渡邉哲也:ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0
ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0: 2020年までに生じる世界のリスクと新たな秩序
- 作者: 渡邉哲也
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2018/01/31
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
ポスト平成、令和が始まりましたね。
⑧-2 田村秀男 :反逆の日本経済学
著者は違うけれど、世の中には反逆シリーズってのがあって、大体クセが強くて苦手...(-_-;)
実践編
①藻谷浩介:里山資本主義
里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷浩介,NHK広島取材班
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 新書
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②福島聡:紙の本は、滅びない
いつかこの本をKindleで読みたいです。
③浜田寿美男:「私」とは何か
④杉田敦:政治的思考
⑤沖田行司:日本人をつくった教育
↑こちらは中古でしか手に入らないので、こちら↓で概ね代用できます。
江戸時代、明治時代の教育の変遷を捉えながら、現在の教育について考える内容です。
⑥荻原浩:いつか来た道
第155回直木賞の受賞作「海の見える理髪店」に含まれている作品。
選考の様子はこちらかどうぞ。
⑦加藤周一:60年前東京の夜
この本に含まれてる2005年の作品。
⑧-1 上念司:地方は消滅しない!
⑧-2高橋洋一:未来年表 人口減少危機論のウソ