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英作文と和部英訳の参考書レビュー

英作文はハードルが高い。受験勉強で英語を「読める」ようになっても、英作文まで十分手が回る人は多くない。

 

なぜ英語を「書く」事はハードルが高いのか?(あるいはそう感じるのか)そして全くゼロの状態から英作スキルを磨いていくにはどうすればいいのか?それを考察しつつ、オススメの参考書を挙げていこう。受験を想定して書くが、英検やその他英語資格試験にも使えるはずだ。

 

 

■なぜ「書く」はハードルが高いのか?

英語に限らず言語は「読む、聴く、書く、話す」の4技能に大別できる。そしてこの中で一番難しいのが「書く」ことである。それはなぜか?

説は色々あるだろうが、個人的に推しているのは「人類と文字の歴史が浅い説」だ。

 

・言葉と文字

言葉と文字を言い換えると、音声言語と書記言語と言い換えることができる。人類の歴史史上「聞く、話す」の音声言語はその初期から行われてきた。もちろん当時の言葉は今のような体系的なものではなく、どちらかというと「単なる音の発生」に近かったと推測される。サルの鳴き声を想像してもらえれば理解しやすいだろう。

それでも、自分の存在を同胞に知らせたり、仲間へ危険を知らせたりと、コミュニケーションの手段としては十分だった。逆に言えば「聴く、話す」という音声を使ったコミュニケーションは、生存に置い必須のスキルだったのだ。

 

ところが「文字」はそうではない。文字の読み書きが出来なくても生きていく事はできる。確かに、文字のおかげで過去の膨大な知識を蓄積し、集積し、体系立て後世に残していくことができた。文字の歴史は人類の知的優位性の証といえる。しかし、その発生は「言葉」の歴史と比べると、つい最近*のことである。

 

識字率という言葉があるが、あれは「書記言語を認識できるか」の指標である。一方で「音声言語を認識できるか」の指標はない。指標が無いということは、計測するまでもなく音声言語習得は当然の技能であり、その獲得に教育の必要はないということでもある。

 

以上が「読み書き」能力が「話す聴く」以上に、一定の練習を必要とする技能である理由である。そして、「読む」と「書く」を比較したとき、明らかに書く方が能動的*な行為である。よって「書く」が四技能の中で最も難しいスキルと言えるのだ。

 

結論:「読み書き」能力は獲得するために練習が必要なスキル 、さらに「読む」より能動的な「書き」が最も習得に時間がかかる技能である

 

ただ、そんなにビビる必要などない。習得の難易度に合わせて、試験難易度も調整されている。よく言われることだが、学術書レベルの読解が必要な「読み」の試験に対し、中学レベルの運用ができれば合格するのが「書き」の試験だ。

 

*言葉と文字の歴史:何を言葉とみなすか、どこからを文字も見なすかは結論が出ていない、ざっくり言葉は25万年前、文字は5000年前と認識している

*読みが受動、書きが能動:言葉には受動的語彙(見たり聞いたりすれば意味が分かる)と能動的語彙(話したり書いたりできる)があり、受動的語彙数>能動的語彙数の関係式が成り立つ

 

と、前置きがとっても長くなってしまったが、ここからは英作力を独学で伸ばしたい人向けのオススメ参考書をつらつらと書いていこう。

 

■英作文へのスタンスと結論

さて、先ずは英作文学習へのスタンスを決め、そこから目標を設定する必要がある。これは勉強をする上で非常に重要なことである。なぜなら、勉強には試験日という時間的制約がある。1年なら1年、半年なら半年と、その中で最大限合格の可能性を広げる行為に注力する必要がる。「英作文に全力かけたら満点でした、でも長文はボロボロでした」ではいけないし「英語に集中したら、英語は満点でした。でも不合格でした」もダメだ。何事もバランスが大事である。

 

とういうわけで、受験英作文は「十分時間をかける余裕はないが、対策しないわけにはいかない教科」といえる。じゃあ、こちらのスタンスは「できる限り短い時間で、合格点を取れるようにする」がベストアンサーとなるのだ。

 

これから参考書のレビューを書いていくが、結論から言うと次の2冊をオススメする。使い方やレベルの詳細が知りたい人は一番最後に書いておくので参考にしてほしい。

オススメの流れ

①英作文実況中継(最低限の対策がしたい)

    ↓

②例解和部英訳(確実に合格点を超えていきたい)

 

 

■参考書レビュー

・英作文実況中継「入り口は低く、到達点は高く」

大矢復 英作文講義の実況中継 (実況中継シリーズ)

大矢復 英作文講義の実況中継 (実況中継シリーズ)

 

part①和部英訳、part②語彙、part③自由英作文の3パート構成。「学校で習った文法を使って、正しい文を書きましょう」というコンセプト、和部英訳は50テーマに例文が50と少ないので、英作文初心者も入りやすい。例文や問題が多いのは確かにいいが、多過ぎて手をつける気が起きないのでは元も子もない。その意味で英作アレルギーがある人にも向いている。

 

part①和文英訳

50文しかないので、1日5文でもたったの10日で終わらせることができる(もちろん1周で終わりにしてはいけないが)。また1テーマに付き、2問の演習問題があるので、やろうと思えば合計150問の問題に取り組むのが可能。

 

part②語彙

もちろん取り組んだ方がいいんだろうけど、あくまでおまけ、参照ページ感が否めない。使った記憶は殆どない。

 

part③自由英作

和文英訳と自由英作がセットになっているのは結構珍しい。紙面的にそこまで詳しくはないけれど、最低限必要なことは載っているので、センスある人ならこれで十分。自由英作文で大事なのは、論理展開とその際に使えるフレーズを覚えることだ。単に模範解答を覚えるだけではなく、その解答がどんな論理展開になっているか意識しながら覚えていこう。

 

■結論

英作文に苦手意識のある人や、十分に時間をかけられない人が取り組むのに適している。英作文を全くやったことないレベルから、最低限入試に必要なレベルまで引き上げてくれる参考書である。確かに、これ1冊で十分かといえばそうではない。しかし繰り返すが、受験や試験は「総合力」の勝負である。英語長文は圧倒的配点を占める、他教科にも時間を割かねばならない。まずは限られた時間で最大の効果を狙い、本書から学び尽くしてほしい。

 

・ハイパー英作文「実況中継に網羅性を足したもの」

大学入試英作文ハイパートレーニング和文英訳編

大学入試英作文ハイパートレーニング和文英訳編

 

作者は英作文実況中継と同じ大矢復氏。なので基本的な考え方は同じだが、例文数が増え、扱う文法項目と解説が詳しくなっている。

この本は初心者にはあまりオススメできない。扱う項目が増えた分、当然情報量も増えている。文法知識が乏しいまま取り組むと、中々進まず効率が悪くなってしまう。せめて、英頻やネクステといった網羅型文法問題集で6割以上取れるようになってからの使用が望ましい。逆に文法の基礎が完成しているなら、検討に値する本である。

 

結論:すでに基礎が完成している人向け。悪くないけど立ち位置が微妙。

 

・ドラゴンイングリッシュ「コンパクトにまとまった必要十分な1冊」

ドラゴン・イングリッシュ基本英文100

ドラゴン・イングリッシュ基本英文100

 

言わずと知れた英作文教材の雄。この参考書で学び、救われた受験生も多いだろう。何が良いかって、たった100文暗記で受験英作文を乗り切ろうというコンセプトである。無限に思える英語学習、そこに100文という明確な、そしてなんともキリの良いゴールを与えてくれた。この本が支持される所以である。

 

ただ、絶賛の声の中大変恐縮ではあるが、これは使用者を選ぶ1冊である。これを使えるのは、文法や語法の知識が十分な受験英語中級者だ。英作文初心者にオススメできない。その理由を2つ上げてみよう。

 

理由①:文法項目が体系的になっていない

「いきなり仮定法で始まる」で御馴染みの本書だが、文法項目を体系的には教えてくれない。体系だっていない弊害は、自分が今どこを勉強しているのか分からず、成長を感じにくくなってしまう事だ。成長を感じ無いと達成感を得られず、達成感を得られないと学習を続ける意欲を失ってしまう。これが理由の一つ目だ。

 

理由②:解説が必要最低限

見ればわかるが、本書は見開き1ページで例文と解説が完結するようにできている。これはレイアウトとしては最高に使いやすい。しかし、それ故の欠点もある。レイアウトを優先した紙面の結果、解説部分が物理的制限を受け、最低限の内容になっている。当然、文法の原理原則から説明する余裕などない。これも初心者にオススメ出来ない理由である。

 

じゃあ、どんな人にオススメできるのかといえば、文法なんか復習しないくてもいい人にはちょうどいい。程よい難易度(出来る人にとってのね!)、程よい分量(たったの100文!)、1日5文やるだけで1ヶ月とかからず1周できてしまう。後は受験のその日までひたすら繰り返して全文一瞬で思い出せるようにするだけである。

 

結論:分量最適、レイアウト最高、文法完璧ならベストかも。

 

・英作文が面白いほど「もう英作文しかしなくていいじゃん、な人向け」

CD2枚付 決定版 竹岡広信の 英作文が面白いほど書ける本

CD2枚付 決定版 竹岡広信の 英作文が面白いほど書ける本

 

まず紙面がうるさい。紙面から伝わる圧が半端じゃない。そして物理的にも重厚、重い。まさかの400ページ越え、圧巻。相当の覚悟がないままに取り組むと挫折すること請け合いな本。

その分、著者竹岡氏の情熱がこれでもかと詰め込まれている。やりこむ見返りは十分ある。ただ、繰り返すが、覚悟なければ使い切れない。使いきれなきゃ意味がない。「必要最低限で合格点」のスタンスからはオススメは出来ない。

これをオススメできる対象は、既に十分英語ができていて後は英作文だけに集中すればいい人、或いは竹岡先生の熱烈な信奉者でやり切る覚悟のある人、のどちらかだ。

 

結論:余裕か覚悟があればどうぞ 

 

・例解和文英訳「ドラゴンイングリッシュの痒いところに手が届いた、現状ベスト」

例解 和文英訳教本 (文法矯正編) --英文表現力を豊かにする

例解 和文英訳教本 (文法矯正編) --英文表現力を豊かにする

 

 正直これがあれば「ハイパー英作文」も「ドラゴンイングリッシュ」も「面白いほど~」もいらない。それくらい完成度が高い。

扱っている内容は「ドラゴンイングリッシュ」と割と被っている。じゃあなにが違うかといえば、「ドラゴン~」が紙面の都合で割愛した文法をしっかり解説してくれている。また、分野ごと区切られ、文法も体系的に学べるようになっている。

 

つまり、

ドラゴンイングリッシュ+文法解説+体系理論=例解和文英訳

という感じだ。そう考えると、鬼に金棒、いや、焼き魚に大根おろし、カレーにハンバーグである。

但し、解説が詳細な分、求められる知識水準は高い。文法が疎かなまま取り組んでも得るものは少ない。本書の記述で少しでも不安を覚えたら、直ぐに文法書なりで調べて不明点を潰していってほしい。

「 こういう時はこう言え」だけではなく「なぜそれなるのか」に答えてくれる、英作の勉強をしつつ、文法の原理原則に立ち返れる、非常に稀有な一冊である。

 

オススメな流れと対象者レベル

最初に書いたが、オススメは①実況中継→②例解和文英訳の流れてある。但し、全ての人が②までいけるとは思ってないし、また、人によっては行く必要もない。時間的余裕がなければ①までになるし、志望校で求められるレベルが高くなくても①まででいい。

自分の現状能力、残された時間、志望校の要求レベル、最終的にはそれらを統合して判断してほしい。何度も言うが試験は「総合力」の勝負である。

 

 ①英作文実況中継

対象者

・センターレベルの文法分野で得点率7割未満

・偏差値60以下

・文法に不安がある

・英作対策をしたことがない

このどれか一つでも当てはまれば。ここからスタートした方がいい。まずは見出しの50文を解説を読みつつ速攻で覚えよう。1日5文で10日で終わる。そこから3周しよう。それで約1ヶ月である。

それが出来たら例題の100文を覚えよう。解説を読み返しつつ1日3テーマ(6文)、約半月で1周しよう。復習は1日5テーマ(10文)にして、また1ヶ月で3周しよう。これで掲載されている150文を全て3周したことになる。ここまでで所要時間2.5ヶ月である。

 

最低限の対策でいい、或いはこれ以上英作文へ割ける時間が無いのならここまでである。後は受験本番まで1日10文くらいのペースで復習しよう。もし余裕があれば↓に進めである。

 

②例解和文英訳

対象者

・文法に自信あり

・英作対策をやった経験がある

要はある程度英語に自信があれば、いきなりこちらから入っていい。全部で105テーマあるので、1日5テーマ、復習も込みで1ヶ月でまわしていこう。後は試験当日までひたすら繰り返すだけである。

人間は忘れる生き物だ。最低10周、出来れば20周以上復習しよう。ビビる必要はない。繰り返せば繰り返すだけ、1周にかかる時間とエネルギーは減っていく。仮に1周目に50時間かかったとしても、2周目は40時間、3周目は25時間と、加速度的にスピードが上がっていく。模試や試験の締め切り効果も使用しつつ、短い時間で復習していこう。

 

 

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