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没頭できることを求めて

お金で飯が買えない世界(前編)

世界市場。横文字にするとグローバルマーケット。そんなことを言うと大袈裟だが、これから話すのはその中のごく一部、僕らが普段食べている食料についての話だ。仕事として関わり、直接見聞きした範囲でこの5年間(20102015年)の間にどんなことが起こっていたのか。その一部として記録を残しておきたい。

市場における需要と供給の話から始め、最終的に金はあるのに食物が買えない状態がなぜ起こるのか、について触れていく予定だ。先ずは経済の復習からいってみよう。

 

 

需給の話

高等教育を受けたことがあれば、授業で需要と供給という単語は聞いたことがあるだろう。買いたいと思う気持ちと、在庫や品揃えの話だ。僕らは店で購買活動を日常的に行っているが、売っているものは日々値段が変わっている。その価格を決めるのが需要と供給の関係だ。

モノが豊かな日本だと特にそうだが、僕らが欲しいものは何でも買える。価格は多少上下することはあっても、お金さえあれば買えないことはない。しかし、貿易の世界では金はあるのに欲しいモノが買えないという事態がしばしば発生する。

それはなんでかというと、資源は有限、かつ食べ物には好き嫌いがあるからだ。

 

・制約と制限 

肉にしても魚や植物にしても、成長にかかる時間がかかる。また、生産者(供給者)も継続的に事業を続けるために現時点の資源に制約を設ける。もし今ある資源を全て使い切れば、今後供給する資源とそのタネがなくなってしまう。それに短期的に見れてば、過剰生産は価格の下落を招いて自らの首を絞める。だから過剰生産にならぬ様、生産調整もする。時間的制約と計画供給、これが天然資源が有限である大まかな理由だ。

さらに、食料の供給は存外不安定だ。疫病が蔓延するかもしれない、今年の水揚げは漁に出るまで確定しない、天候の操作は人智を超えている。不思議なもので、どこかが悪くなれば、どこかが良くなる。結果として供給量は相殺されて安定するが、是正にも時間はかかる、同じ供給先か仕入れ続けられ保証は変わらず無い。

 

自給率と世界人口

ご存じのとおり、日本の食料自給率40%程で、過半数以上を輸入に頼っていいる(ここで自給率高低の是非は問わない、単に事実の表記だ)。そして今、世界の人口は順調に増えている。人口が増えれば消費される食糧は増える。

資源が有限であり、需要が供給を上回れば、資源を買える人買えない人が出てくる。これが売り手市場というやつで、売り手側に決定権があり、買い手同士が競争する状態となる。しかし、ここで一つの要素を見落としている。国には食べ物の好き嫌いがあるのだ。

 

世界の食料需要は伸びてるけど、全員と競うわけじゃない 

個人の食べ物の好き嫌いがあるように。国にも食べ物の好き嫌いがある。それは食文化と呼ばれる。日本では牛や豚の肉が好んで食べられるが、ヒンデゥー文化圏やイスラム文化圏では、宗教的側面から食料としての肉の需要が低かったりする。これらは極端な例ではあるが、同様に各食物において各国で需要に差がある。

では、買手として日本と競合する国はどこか?そう、周辺国。特に隣国である。 

なぜ隣国が買手として競合するかといえば、食文化が似ているからである。もちろん各国で独自の食文化を持ってはいるが、近隣国はやはり似ている。分かりやすい例だと、日中韓を含むアジア圏では欧米のそれとは異なり、主なエネルギー源として小麦ではなく米を主食としてきた。ここから買手のライバル、中華人民共和国との話になる。

 

GDPで日本を抜き、世界第2位の経済大国になった中国。

一方、民主党から自民党への政権交代も起こり、円安株高な日本。

この両者は売り手からどう映ったのか。後編へ続く。

 

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